第3回 atelier h.s.代表ユキさん
親子で作り上げる作品
時田:ユキさん、では今日は宜しくお願い致します。はじめにkahogoに応募されたきっかけをお伺いできますか?
ユキ:kahogoの広告がいっぱい流れて、何かなと思ってみたら、石鹸でした。
私は石鹸が好きなのでまず石鹸に目がいって、よく見たら作品を公募していることを知り、応募した流れです。
時田:そうでしたか。有り難うございます!ユキさんの作品は亡くなられたお父様、斎藤壽さんの作品をアレンジされているとお伺いしています。斎藤壽さんの作品は沢山あると思うのですが、どの作品で応募しようとか迷われなかったですか?
ユキ:そうですね。丸い小さいキャンバスを見たら、リスしか思い浮かばなかったです(笑)もうリス一択でした!
時田:そういえば第三弾も丸い洞穴の中からリスが覗いているようなアングルですね!
ユキ:そうですね。初めに何か一つだけ応募すると考えたら、目が合うリスが一番いいかなって。
時田:先ほど原画を拝見させていただいたのですが、リスの実のところがハートになっているのはユキさんのアイデアですか?
ユキ:そうなんです、kahogoソープのイメージです。他者の作品をアレンジは普通できないと思いますが、そこは親子の特権で(笑)。
atelier h.sとして活動を始めるきっかけ
時田:他の作品でもユキさんのセンスでアレンジすることはありますか?
ユキ:そもそもこの活動を始めるきっかけとも繋がるのですが、5年前に父が亡くなり、遺されたたくさんの作品をどうしようと考えていました。回顧展などの要望もあったのですが、自分の仕事もあるためハードルが高く、悩んでいたときに、あっ、私たちデザインもDTPもできるし、協力してくれる印刷会社さんもいるじゃない!と気づいたんです。どうせなら今の時代を意識した楽しいもの、アレンジを加えたりもOKのグッズという形でまずは発信を、という展開になったんです。
時田:生前にお父様と絵を通して交流はありましたか?
ユキ: HP作りを頼まれたり、仕事をなんらかの形で手伝ったり、それなりに機会はあったかな。
父とは仲もよかったので、作品をアレンジしても怒られることはなかったです。
年賀状とかでも、父の絵に思いっきり手を加えて出したり(笑)。父も爆笑してましたけど。
時田:ではユキさん自身も作家さんだったんですね(笑)
ユキ:アハハ、畑は違いますがクリエイティブな活動はしていましたね。
ユキさんのアートの楽しみ方
時田:幼少期はお父様に絵を教えてもらったりしましたか?
ユキ:そうですね。教えてもらったこともありましたが、手が不器用で思うように描けなくて。PCの登場で不器用はカバーできるようになりましたが、絵を描くことよりも、すでにあるものをよりよく見せる方に興味があると、その頃自覚したかな。
時田:お父様の絵をアレンジしても世界観はぶれないようにしている意識されていますか?
ユキ:実はブレブレになったので、別にブランドを作りました。
父の絵をそのまま使うものは”atelier h.s.”、私が手を加えたものに関しては“+sucre” (シュクル)として区別しています。
時田:斎藤壽さんの作風は写真のようなものやkahogoのようなキュートなものなどありますよね。
ユキ:私が子どもの頃は、ほとんど車の絵でしたね。多少鳥もありましたが、メカの透視画の第一人者だったので仕事としては、車ばかりが記憶に残っています。
ところが私が高校生ぐらいのときに父がメカの絵はやめると言い出し、本格的に鳥の絵を描き始めました。
時田:自然の絵を描く時はどこか自然に足を運んで描いていたと言うスタイルでしたか?
ユキ:自然は好きでしたが、メカを描く仕事に追われていたので、主に昔撮った鳥や風景の写真を資料としていたようです。
時田:その後八ヶ岳にアトリエを作ったとお伺いしました。
ユキ:私の積極的な推し(笑)もあり、八ヶ岳にアトリエを構えました。
時田:ユキさんの提案でしたか!
ユキ:私自身、自然が好きということもありますが父はそれ以上にそういう場所が大好きと知っていたので背中をどーんと押しただけです(笑)。
時田:アトリエができたのはどれくらいですか?
ユキ:今から20年くらい前だったかなぁ?そこからは資料だけではなく、窓からの風景などもモチーフに描いてましたね。
斎藤壽さんの様々な作品
時田:kahogoの作品で遺作を応募してくださった方は、ユキさんが初めてなのでぜひお話いただきたいと思っていました。
今回斎藤壽さんの作品を持ってきていただけたとのことで。ありがとうございます。
ユキ:このメカの絵は細かい部分が多いので、原画はもっと大きいですね。
時田:どうやって描くのでしょうか?
ユキ:実は私もよく分からないのですが、エアブラシと沢山のマスキングで描いていました。一日中「トトトト」という音が家に響いてましたよ。
時田:制作期間はどのくらいでしょうか?
ユキ:ものによると思いますが1ヶ月くらいだったかなと。私的には結構速かった印象です。
時田:制作部屋にはユキさんも入ることはありましたか?
ユキ:家に帰ったら、制作部屋に直行していました(笑)。私は今日の出来事を話し、父は適当にうなづきながら制作、というのが日常でした。父はとにかく絵が好きで、仕事以外でも一日中部屋で何か描いていて、どこかに出掛けても絵のことを考えていましたね。
ユキ:この『大人の塗り絵』(河出書房新社)シリーズは父が亡くなる1年くらい前からのものですね。当時78歳ということもあり絵の依頼は断っていたのですが、描き下ろさずにできそうだし、編集者さんがとてもすてきなアプローチをしてくださったこともあり、なんとか重い腰をあげてくれました。
時田:これは晩年の作品になるのでしょうか?
ユキ:1作目の『日本の野鳥編』は手元にあった作品がほとんどですが、人気が出て2作目の『自然の中の動物たち編』のお話をいただいた時は再燃したのか、描き下ろしもしていましたね。
アレンジという魔法
時田:ユキさんのアイデアで作品をグッズにして、演出などもされているのですね。
ユキ:すでにあるものをより素敵にみせる魔法をかけるのは大好きですね。
時田:お父様の作品に魔法をかけていくという考えが素敵ですね。
ユキ:ありがとうございます。実際やりたい放題なだけなんですけどね(笑)。
時田:世界観は崩さないでアレンジということですよね?素敵だと思います。
ユキ:そうですね。あと、理解者がしてくれるなら、の大前提はありますが、父はアレンジをあまり気にしない、楽しむタイプだったと思います。それと遺作を使った活動なだけに、神妙な感じになるのも避けたくて、父を知らない方にも素敵と思ってもらえたらうれしいなという想いで、日々魔法をかけています(笑)。
時田:絵を買うことにハードルの高さを感じる人にとってグッズにしていただくと「かわいー!」「封筒なんだ、じゃ買お」という風に作品が身近になりますよね。
時田:こちらの作品はどんな作品ですか?
ユキ:背景は私が作っていますが、鳥とか鹿は父の作品からです。女子向けのカードという想定ですね。森とか幻想的な物がすごく好きで、最初はあくまでも私個人の作品として作っていたのですが、自由に使える父の素材があるということにある日気がつき(笑)。
ユキ:これはサマーソニックのランタンプロジェクトでランタンとなって会場に飾られたデザインです。
時田:これはとても可愛いですね!
ユキ:これ時田さんに差し上げます!
時田:ありがとうございます!有り難く頂戴いたします!嬉しいですー!
Atlier h.s.さんの今後の活動
時田:今後もグッズを展開していく予定はございますか?
ユキ:そうですね。最近はありがたいことに声をかけていただくことが増え、なんと高速道路のサービスエリアでもグッズ販売させていただいたんですよ。
時田:高速道路ですか?!
ユキ:異色でしょ?(笑)。以前、各サービスエリアに置いてある高速道路のエリアガイドの表紙が全て父の描いた鳥になったことがあり、そのご縁です。
時田:この作品のコラージュをしたのはユキさんですか?
ユキ:中は父の作品そのままなのですが、表紙はコラージュしたものです。絵柄を散りばめるのが構図的に難しく、組み合わせて一つの絵のように見せています。
時田:レターセットよりも、ちょっと何か一言かけるメモはすごく便利ですよね。
ユキ:そうですね。箱根にあるラリック美術館のSHOPパッサージュさんでも取り扱って下さっているのですが、若い方から年配の方まで幅広く人気のようです。作品そのものに興味を持ち、イベントに足を運んでくださる方も。
時田:ダブルネームと言っても過言ではないですね!
ユキ:(笑)父のキャリアからすれば私は便乗で遊んでいるだけですが、新しいイメージという意味ではそうかもしれないですね。
時田:所蔵されている作品がいっぱいでということを伺いましたが、今後の活動や、このような感じで発信していきたいですか?
ユキ:去年、atelier h.s.主催でちょっとしたイベントをしたことをきっかけにいくつかのオファーをいただきました。世の中の状況が落ち着いたら、また展示活動をと密かに準備はしています。展覧会や新しい息吹を入れたグッズを販売するイベントも予定していますので、是非遊びに来ていただけたらと思います。
ご自身の作品に合うフレームを選んでいただきました
atelier h.s.ユキさんの作品に合うフレームをご自身に選んでいただきました。
最初は少し悩みながら色々と合わせてみて「あ、これかな!」と1つ目の作品を決めると「つい統一感を持たせちゃうんです」と言いながら2つ目の作品は迷わず決めてらっしゃいました。
2つを並べた時のバランスを考えながら決めた素敵な作品となりました。
是非みなさまもお買い求めの際は参考にしてみてくださいね。
atelier h.s.さんのイベント予定
【日本野鳥の会】
鳥や生きものを愛する作家さんをお呼びし、作品の展示と、グッズの販売を行います。
ほっこりかわいい雑貨や、精巧に描かれた鳥の絵など、様々な作家さんの作品に出合える場です。
- 日時:2020年10月31日(土) 11時〜16時
- 場所:東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル 催事スペース
atelier h.s.さんのプロフィール
齋藤 壽 Hisashi Saitoh
1960年よりフリーのテクニカルイラストレータとして活動。
写実と繊細な情景描写表現が同居する、圧倒的かつ、それまでにない世界感で、国内のみならず海外からも高い評価を得る。
本田技研工業をはじめ、多数の企業から熱い支持を得て、約40年に渡り常に第一線で活躍。
齋藤 壽さんの詳細プロフィールはこちらをご覧ください。
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atelier h.s.は、名前は知らなくても「あ、これいいな」と手にとっていただけるようなモノづくりを心がけ、齋藤壽の作品を風化させないための活動をしています。
今回の撮影にご協力いただいた「ビオ・オジヤン・カフェ 下北沢」さん
今回、撮影にご協力いただいた「ビオ・オジヤン・カフェ 下北沢」さん。
追加トッピングができるオジヤが看板メニューです。インテリアが素敵な居心地の良いカフェでした。
ご協力ありがとうございました。
- 営業時間: 11:00〜23:00(フードL.O22:00、ドリンクL.O22:30)
- 定休日:不定休
- 電話番号: 03-5486-6997